国立がん研究センター東病院と鶴岡市立荘内病院、医療連携に関する協定締結
~地域のがん医療の支援と遠隔診療の実現を目指す~
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市、以下「東病院」)と鶴岡市立荘内病院(病院長:鈴木 聡、山形県鶴岡市、以下「荘内病院」)は、地域医療への貢献と鶴岡市におけるがん医療の高度化を図るため、医療連携に関する協定を7月8日に締結しました。
国立がん研究センターは、2017年4月に慶応大学先端生命科学研究所と山形県及び鶴岡市と連携拠点協定を締結し、国立がん研究センター鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室を立ち上げ、がんの診断薬などの研究を進めてきました。今回の医療連携協定は、これまでの連携・協力から発展した新たな取り組みです。
本協定により、荘内病院内に「がん相談外来」を開設し、東病院の専門医が月に1回程度診療を行います。さらに荘内病院をがんの遠隔診療を探索するプロジェクト施設に位置づけ、オンラインによるセカンドオピニオンの検証研究を行います。希少がんや難治がんなどの治療や、高難度の手術を東病院で行い、治療後のフォローに遠隔診療を活用することで、患者さんの身体的・経済的負担の軽減が期待されます。東病院が、地域の医療機関と連携して遠隔診療の実現を目指した連携協定を締結するのは今回が初めてで、日本国内の遠隔診療モデルの実現を目指します。
また、東病院のがん看護専門課程の研修参加をはじめ、メディカルスタッフの人事交流などを行います。今回の連携により、お互いの特色を生かした円滑な診療連携を通じて、両病院の医療の質の向上を図ります。
医療連携の主な取り組み
1.「がん相談外来」の開設
令和2年11月、荘内病院に「がん相談外来」を開設しました。遠方の専門病院に足を運ばなくても、セカンドオピニオン(※)を受けることができます。がん診療や薬の副作用、手術前の不安や療養生活でお困りのことなど、お気軽に相談できます。
(※)セカンドオピニオン…診断や治療方針について、主治医以外の医師の意見を聞くこと
○診察日:毎月第一金曜日(原則)
○担当医:全田 貞幹(ぜんだ さだもと)
国立がん研究センター東病院 放射線治療科 医長
同 医療コンシェルジェ推進室 室長
同 支持・緩和研究開発支援室 室長
国立がん研究センター中央病院 支持療法開発部門/J-SUPPORT 支持/緩和領域チーフディレクター
〇担当医からコメント
鶴岡市立荘内病院と国立がん研究センター東病院の診療連携協定が2020年7月に締結され、鶴岡市の医療に最先端の医療を組み込むプロジェクトが始まりました。がん相談外来では荘内病院内で国立がん研究センター東病院の診察を受けることができます。
この連携は鶴岡市にお住いの方が安心してがんの診療受けていただくことをGoalと考えており、この目標を市民の方々にがんに対する正しい知識を身に付けていただくことや荘内病院のがん診療レベルの向上を通して達成していければと思っています。
2023年3月までに80組を越える市民の皆様が相談に来られました。
がんの治療の進歩には基礎の研究に始まりそれが人に応用され、最後には日常の臨床に定着するというプロセスが必要で、私は「日常の臨床に定着する」という部分を担います。鶴岡市の方々の力になれるよう頑張ります。
2000年防衛医科大学校卒、2014年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了、医学博士。 2002年静岡県立静岡がんセンター研修医、放射線治療科非常勤医師を経て、2006年より国立がん研究センター東病院放射線治療科勤務。 2015年より同医長。 2020年より支持・緩和研究開発支援室室長を兼務。 2015年より国立がん研究センター中央病院支持療法開発部門を兼務。専門は放射線治療、頭頸部がん、支持療法。 |
2.電子カルテの共有化
令和3年10月、当院の電子カルテが東病院でも閲覧できるようになりました。診療情報の共有を図り、より円滑ながん診療につなげていきます。
3.遠隔診療の導入検討
東病院と当院を専門回線で結び、テレビ会議システム等を整備します。「がん相談外来」からの紹介等により東病院で高難度の手術などを受けた場合でも、当院にいながら、モニターを通して東病院の専門医による診療を受けることが可能になります。
4.遠隔手術サポートシステムの導入検討
当院において行われるがん手術に、東病院の専門医がモニターを通して助言等を行える環境を整備することで、当院のがん手術の高度化を図ります。
5.荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治療最前線」
全国に先駆けて実施されているがん医療提供体制モデルを、東病院の専門医によって分かりやすく紹介する荘内日報との連載企画が2021年5月にスタート!
記事は最先端のがん研究、治療に当たる東病院の医師が執筆し、原則毎月第4土曜日に掲載されます。都市と地方の医療機関をつないで、全国に先駆けて実施されるがん医療提供体制モデルについて、理解を深められる内容となっています。ぜひご覧ください。
- 第1回 国立がん東病院での取り組み(pdfダウンロード_528KB)
- 第2回 がんと新型コロナウイルス感染症(pdfダウンロード_407KB)
- 第3回 荘内病院におけるがん相談外来について(pdfダウンロード_1100KB)
- 第4回 頭頸部がんをより良く治すには(pdfダウンロード_634KB)
- 第5回 肝臓がんに対する傷の小さな腹腔鏡手術(pdfダウンロード_211KB)
- 第6回 がんの克服をめざす薬物療法(pdfダウンロード_635KB)
- 第7回 胃がんに対する手術
- 第8回 チームワークが支える泌尿器科ロボット手術
- 第9回 鶴岡連携研究拠点における第2期目の取り組みについて
- 第10回 国立がん研究センター東病院における患者さんのトータルサポートを目指した取り組み~放射線治療およびレディースセンターを中心に~
- 第11回 あなたの日常を守る大腸がんに対する外科治療の進展・リキッドバイオプシーによるがんゲノム医療
- 第12回 食道がんの外科治療の進歩
- 第13回 消化器がんに対する内視鏡治療の進歩
- 第14回 肺がんに対するからだに優しい手術
- 第15回 あなたがもし肺がんと診断されたら・・・
- 第16回 他人事ではない乳がんとその手術
- 第17回 乳がんの最新治療ー治療率向上のための周術期薬物療法ー
- 第18回 頭頸部がんとは・急性骨髄性白血病について
- 第19回 難治がんである膵がんの薬物療法の進歩・失われた組織を創造する!マイクロサージャリーを用いたがん切除後の再建手術
- 第20回 国立がん研究センター東病院における医療安全の取り組み・手術室運営について